前回のXFの魅力に続き、今回は私の1台前の愛車でもあるX-typeをレビューします。既に発売から20年以上、生産終了からも約15年が経過している車種で、年々中古車市場からも台数が減ってきていますが、当レビューが少しでもご興味のある方の参考になりましたら幸いでございます。
私のジャガーX-Typeのスペック
X-typeは、2001〜2009年までジャガーにより製造されていたDセグメントのサルーン及びステーションワゴンです。デザインは、XJ220やS-type、XJ(X300)を担当したジェフ・ローソン(Geoff Lawson)氏。X-typeのグレードは、エグゼクティブとソブリンの2ラインナップ制でそれぞれ2L, 2.5L, 3Lがありました。また「エステート」と呼ばれるステーションワゴンモデルも存在します。因みに、このエステートのテールゲートデザインは、XFやXJ(X351)、F-typeを後にデザインしたイアン・カラム(Ian Callum)氏。製造工場は、リバプールにあった旧フォード工場を使用したとのことです。
発売当初、ジャガーとしては初の4WDということで売り出しましたが、後にFFモデルが追加されました。運動性能を重視するジャガーはこれまでFRが基本でしたが、このモデルで初めてFFを導入していますね。因みにFFは、2023年時点では後にも先にもX-typeでしか採用されていません。当時はフォード傘下でしたが、モンデオとプラットフォームを共有していたこともあり、設計に制限があったのかも知れません。
2Lのエンジンはフォード・デュラテクV6をベースにしたジャガー向けにセッティングをしたエンジンです。実は、フォード・デュラテクエンジンのデザインはポルシェだそう。それから、どこで聞いた情報かは忘れてしまったので信憑性が確かではありませんが、エンジンのヘッドはコスワースだとか。素人的には、「V6」「ポルシェ」「コスワース」なんて聞いちゃうと、「おぉ何か速そう」って響きだけで思っちゃいますよね。実際に、一度スピードが出れば軽快に走るクルマでしたが、車重が1500kg以上あることもあり、走り出しは「もう少しパワー欲しいな」というのが正直な感想でした。
グレード名 | ソブリン |
全長/全幅/全高 | 4,685/1,790/1,420 |
定員 | 5名 |
排気量 | 2,099cc |
シフト | 5速AT |
駆動方式 | FF |
搭載エンジン | AJ20(V型6気筒) |
最高出力 | 117kW (159PS) /6,800rpm |
最大トルク | 200N·m /4,100rpm |
燃費(私の肌感覚) | 高速:11km/L 街乗:8km/L 渋滞:4〜5km |
ジャガーX-Typeの「ここが魅力!」
ジャガーX-typeの魅力をいくつか挙げてみました。私の思い出回顧録ということで残しておきます。
扱いやすいサイズ
現在のジャガーXE、メルセデスのCクラス、BMWの3シリーズに相当する、Dセグメントのクルマのため、とても取り回しが楽でした。XFに乗り換えてからは、駐車場で停める場所を選ぶ必要が増えた印象がありますが、X-typeはその点気にすることが殆どありませんでした。
XJの世界観を味わえる
20世紀のジャガーのラインナップを見るとFセグメント+クーペで展開してきていることがわかります。セダンのXJを基本として、クーペのE-typeやXJS、XKなどをラインナップして販売されていました。そこにS-type/X-typeのEセグメント/Dセグメントのモデルが追加されたわけですが、これらがジャガーの客層拡大に一役買ったのではと思います。
当時発売してたX350のXJは基本4Lの大排気量エンジンである上、サスペンションはエアサスを使用していたこともあり、維持費が大変なのは間違えなさそうですが、そこに外観がそっくりな弟分が出てきたのは、これまでずっと「ジャガーに乗ってみたい」と思っていた私みたいなユーザ層には、非常に魅力的な選択肢を与えたと言えるでしょう。
インテリアデザインも材質や造りなど詳細に見るとXJとは全然違うのですが、レイアウトや色使いなどはXJと共通のデザインランゲージで、内装も存分にXJの世界観を味わうことが出来ますよ。
品のある音(エンジン・ドア)
エンジンはV6だったこともあり、加速時のエンジン音は聞いていて気持ちよかったです。今の愛車XFは直4ターボエンジンですが、加速音はX-typeに軍配が上がります。XFは「お、ターボ回り始めたな」とかメカ的な面白さはあるのですが。
次がドアを閉めた時の音で、前席のドア2枚は重く、閉めた時も高級感のある音でした。感覚としては、軽自動車の音が「パーン」に対して、X-typeは「ガチャっ」という音。残念ながら後席のドアは普通の音でしたが、このドアの感覚はとても気持ちの良い物でした。XJ(X350)も店舗で実際に内装を見せてもらったことがありますが、同じような重厚なドアとその音でした。
ジャガーX-Typeの「ここが困った…」
燃費
燃費は良いとは言えませんでした。スペックにも記載している通り、街乗りで渋滞にはまると瞬く間にガソリンが減っていくのが分かります。高速で巡航時間がある程度長くなれば、11km/Lくらいまで行くでしょうが、通常走行ではお世辞にも燃費が良いとは言えませんでした。
また、実はこのエンジン排気量が2Lと表記されていますが、実際は2.1Lで日本の税制区分とは相性が悪く、年式も古かったので、毎年「表記サイズの割には高いな」と感じていました。購入を検討している方はご注意ください。因みに、本国及び欧州市場では、ディーゼルとMT仕様もありますが、日本では流通しているのを見たことがないです。
トランク容量
クルマ自体のサイズがそこまで大きくないため、トランクも大きくありません。XEのように後席を倒すことが出来ないので、なんとか上手いことトランク内に収める必要があります。現代のセダンは後席を倒すことが出来るようになっているクルマが多いですが、X-typeが発売されていた頃は、未だこの機能は一部のクルマへのみの装備でした。
1週間用のスーツケースは確か二つ載った記憶があります。それ以上のサイズとなると積載出来ない可能性があります。購入を検討している方で長期の旅行やゴルフなどによく行かれる方は、ご注意ください。X-Typeエステートというステーションワゴンタイプのモデルも検討されると良いでしょう。
異音
この点については個体差があると思いますが、メーター周りのプラスチック部品の干渉音、前輪のサスペンション周りのゴトゴト音、後輪からバック時に「キー」という異音など、建て付けと足回りの音トラブルがまぁまぁありました。走行距離は7万5千キロ程度の時にこれらのトラブルが出てきましたが、このタイミングでメジャートラブル級の音問題が出てくるのは少し早い気がします。欧州の中古車市場では10万キロはまだ需要がありますし、もう少し耐久性があっても良いのではと感じました。
ジャガーX-Typeの思い出
X-typeは、私が人生で初めて所有したクルマです。輸入車を維持する難しさ、楽しさ、お別れの決断まで様々なことを教えてくれた1台です。車検や自動車税、部品代は、当時新卒だった私にとっては、かなり無茶な金額になることが多かったですが、「何が何でも維持してやろう」と必死に仕事に打ち込んだものです。近年のシェアの概念を否定する気は一切ありませんが、所有してメンテナンスする面白さはシェアでは味わえないクルマ趣味の醍醐味でもあります。
このクルマに乗っていた時の一番の思い出は、洗車中に誤ってフロントガラスを割ってしまったこと。別の記事でも書こうと思っていますが、当時の私にとってフロントガラスの一枚交換は、かなりの修理費用でした。
最期はO2センサーの故障と車検のタイミング、上で記載している異音の問題が重なったこともあり、総合的に判断してXFに乗り換えることとなりました。お別れ前夜は、ビールを買ってきてナンバープレートに半分掛け、残りは車内で飲み、駐車場でお別れの儀式をしたのを覚えています。お恥ずかしい話ですが、車内で涙が止まりませんでした。
ジャガーX-Typeのレビューまとめ!
ジャガーX-typeは、フォード下でジャガーが初めて挑戦したDセグメントのクルマです。弟分にあたるのは、現在発売中のXEです。
スペックなどは上で記載している通りです。Twitterにて、元X-type乗りの方とも交流させて頂きましたが、エアコンコンプレッサーはXFよりも高額だったとの情報も頂きました。車体は、2023年3月時点で15〜100万など庶民的な金額で買えるのですが、修理代金が全然庶民的でないので、ご注意を。
1世代前の丸目四灯のジャガーにどうしても乗りたいけど、XJほどの維持費はかけたくないという方には良い一台となるでしょう。Dセグメントのジャガーを選ぶのにX-TypeとXEで迷っている方は、判断軸はデザインになると思うので、丸目のジャガーのエクステリアデザインが好きだという方は、X-Typeを選ばれることをお勧めします。
ただし、価格を理由にX-typeを選ぶのは、あまりお勧めしません。状態の良いクルマを見つけるのが年々困難になっていますし、何かあった場合の維持費として50万円程度は常に手元に確保しておく必要があります。それなりの我慢が必要なクルマだということは承知しておくべきでしょう。
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